「ミシュレの女性メシア論ージャンヌ・ダルクから魔女へ」『近代』76号、1994年、神戸大学『近代』発行会、pp.65-79
本論はミシュレの『フランス史』第5巻中のジャンヌ・ダルクにかんする部分、単行本『ジャンヌ・ダルク』『革命の女たち』『虫』『女』および『魔女』を取りあげ、彼の女性観、とりわけその「女性メシア論」とでも名付けうるような女性論の形成をあとづける。
愛にみちたイマジネーションの力で「神」を創造してその司祭となり、あわれみとやさしさによって人々を結び合わせ、そして新しい社会をもた らすメシアとしての女。ジャンヌの場合は祖国というものをもたらし、魔女の場合はルネッサンスとその延長線上にあるフランス革命をもたらした。民衆の女と いう最下層の被搾取者たちの間から出て、敵方からは魔女とみなされたジャンヌのイメージは『革命の女たち』『虫』『女』等の作品を経て、作者ミシュレの中 でだんだんと魔女のそれへと進化していったのであった。