今までの人生を振り返った時、もしかしたらめったにないチャンスを逃してしまったのかもしれないと思う出来事があるものです。
フランス留学中のこと。ある国際機関に勤務している若い日本人男性とそのフランス人の奥さんが開いたホームパーティに招かれたことがありました。感じの良いご夫婦だとは知っていたのですが、学生の私とはあまり接点がなく、そのことを残念に思っていたので、大喜びでその日を楽しみにしていました。ところが、当日になって私はまさかの体調不良。先方のアパルトマンの住所は知っていても電話番号などはわからず、仕方なく同じ学生寮に住む友人に先方あてのお詫びの手紙をもっていってもらいました。友人はその手紙を先方の住居の1階にある郵便受けに投函しておいてくれたのですが、ご夫婦はそれに気づかなかったのです。ずいぶん失礼なことをしてしまいました。あとから事情がわかって私は再度お手紙を書き、お見舞いの手紙もいただいたのですが、結局そのご夫婦とはあまり親しくなることはありませんでした。もしあの日ホームパーティに行けていたら、もしかしたらその後のお付き合いが大きく変わっていたかもしれません。
そんなふうに残念に思う「出会いそこね」の思い出が私にはいくつかあります。でも、人生というのはそういう偶発的な出来事の積み重ねで進路が決まっていくものなのでしょう。その結果である今の生活について、幸いにして特に不満はありません。