Elle et Lui

-Elle et Lui(1859年刊)『彼女と彼』(岩波文庫、1950年刊)    若き天才画家ローランはなぞの多い年上の女性テレーズ(同じく画家)に恋して相思相愛となるが、その幸福は長続きしない。そんなふたりがイタリアに旅 行する。気分の移り変わりが病的に激しいローランは献身的なテレーズをたびたび裏切って苦しめる。彼女を愛するアメリカ人パーマーの登場はふたりの関係を さらに紛糾させる。やがて、パーマーの求婚をことわってローランとよりを戻しながらも嵐のような愛憎に疲れ果てていたテレーズのもとに、昔外国で死んだと 告げられていた息子が現れ、彼女はその少年とともに遠いドイツへ去る。
  1833年に詩人アルフレッド・ド・ミュッセと知り合って恋に落ちたサンドは彼とともにイタリア旅行に出かけた。しかしヴェネチアでまずサンドが、つ いでミュッセが病に倒れ、ふたりの恋は破れてしまう。そしてミュッセはひとりフランスに戻り、サンドはイタリア人の恋人とヴェネチアに残った。この思い出 をもとにして25年ほどのちに(ミュッセの死後)サンドが書き上げたのが『彼女と彼』である。この小説はミュッセの家族や友人たちからおおいに批判される こととなった。