ー「ジョルジュ・サンド『ナノン』における旅と革命」『国際文化学研究』49号、2017年、神戸大学大学院国際文化学研究科、pp.51-66
ジョルジュ・サンドの小説『ナノン』Nanon(1872年刊)では主人公ナノン(クルーズ地方の貧農の娘)の一人称で彼女の子ども時代からおとなになるまでの出来事が物語られている。1775年生まれのナノンは18才の時に生まれてはじめて村を出て、都市(リモージュ)に向かう。幼なじみの、愛するエミリアンの命を救うために、裸足で街道に出た彼女はリモージュからベリー地方のシャトールーへ、そしてクルヴァンの森の中での逃亡生活をへて、数か月後に村に戻る。この彼女の旅について詳しく検討する。 『ナノン』は、第一帝政の始まる年に生まれ、復古王政、七月王政、第二共和政、第二帝政そして第三共和政まで生き抜いたサンドの最終的な革命観・共和政観がはっきりと表れる作品でもある。本稿では「ナノンの旅」、「所有と金銭」、「フランスと愛国心」という3方面からこの小説を考察し、21世紀の読者がそこから何を読み取ることができるかを明らかにする。