ロマン主義的女性像

-「ロマン主義的女性像ー女の神話と女祭司のイメージ」『近代』78号、1995年、神戸大学『近代』発行会、pp.275-289  4世紀に生まれ19世紀に再び盛んになったマリア信仰において、彼女は2つの一見矛盾した性格を持っている。それは母および処女としてのマリアであ る。そしてこれらは2つの女の神話(「神と男たちのあいだの仲介者としての女性」および「打ち負かされざる処女」)としっかり結びついている。サンドの作 品の中では『コンスエロ』『捨て子のフランソワ』『モープラ』『緑の貴婦人たち』が神(あるいは超自然的な力)と男たちのあいだの仲介者としての女の神話 の系列に属している。一方、彼女の『ガブリエル』や『ジャンヌ』は打ち負かされざる処女神話の系列に属し、特に『ジャンヌ』のヒロインには「処女祭司」の イメージが重ねられている。これはロマン派の作家たちが好んだ「聖なる女性」のヴァリエーションである。サンド、シャトーブリアン、ミシュレらの作品には 女祭司や修道女など、所有することのかなわぬ聖なる女性のイメージがしばしば現れる。彼女らの物語はたいてい(マリアのように)神と男たちの仲介者として の女性の神話または打ち負かされざる処女の神話のいずれか、あるいはそれらの両方に属しているのである。