ジョルジュ・サンドの作品における超自然現象

-「ジョルジュ・サンドの作品における超自然現象ー『緑の貴婦人たち』を中心として」『近代』64号、1988年、神戸大学『近代』発行会、pp.85-96  サンドが1857年に発表した小説『緑の貴婦人たち』は舞台をアンジュー地方の古い貴族の館にとって、遺産相続をめぐる訴訟と、その館にまつわる幽霊 伝説を題材にしたものである。この作品における超自然現象に焦点を絞り、「超自然的な美」、それに触発されて起こる「崇高な狂気」およびそれからの「治 癒」について、彼女の30代の作品『スピリディオン』や『コンスエロ』と比べつつ考察する。
   『緑の貴婦人たち』では最終的にすべての超自然現象が否定されてはいるが、それらが引き起こした愛の奇跡は「実利的な世界」のただなかにあって変わ ることなく続いているといえよう。また、緑の貴婦人は物質世界のかなたにある永遠の理想の象徴であるとも解釈できるであろうが、小説の結末は(二月革命以 前にルルーの影響下にあったサンドが社会レベル・人類レベルでの実現を夢見ていたのとは対照的に)個人生活のレベルにおけるこの理想と現実の融合を示して いるのである。