最近YouTubeで久保田早紀の1979年のヒット曲『異邦人』を聞きましたが、この曲を聞くたびにかならず湧き上がるイメージがあります。私がこの歌を初めて耳にしたのは1980年にフランス留学から帰ってきた時でした。タイトルがカミュの有名な小説『異邦人』を、歌詞やメロディーがアラブ世界を連想させることで当時の私は大きな感銘を受けました。フランス留学で私は初めて大勢のアラブ人たち(ほとんどが学生でしたが)と出会っていたからです。この歌をその後も時々耳にすることがあったのですが、かなり後になって私の中でそれは決定的にあるイメージと結びついてしまいました。山田ミネコのまんが「パトロールシリーズ」のエピソードの1つを読んだからです。その冒頭で、主要登場人物の青年が古代のイェルサレムの街を歩いています。青年は、実はタイムマシーンでこの世界にやってきた未来人(それも犯罪者)で、自分が周りの人々にとって幽霊でしかないと感じています。陽光がまぶしくふりそそぎ、人々の雑踏のなかを歩きながらも彼のまとう孤独な雰囲気が非常に胸に迫りました。それが「異邦人」というキーワードとともに私の記憶の中でなぜか久保田早紀の歌とドッキングしたのはさらにのちのことです。でも、今や私の頭の中ではこの2つはしっかり結びついていて、久保田早紀の歌を聴くと必ず思い浮かぶのはこのシーンになってしまいました。人の連想というのはとてもユニークなものだと思います。