マリー・ダグーと二月革命

「マリー・ダグーと二月革命ー『共和主義者の手紙』をめぐって」『国際文化学研究』17号、2002年、神戸大学国際文化学部、pp.67-84

  マリー・ダグー伯爵夫人(筆名ダニエル・ステルン)が1848年に発表した『共和主義者の手紙』、とりわけその中のラマルティーヌ、カヴェニャック、 ルイ・ナポレオン・ボナパルトという3人の政治家にかんする部分およびフランス女性にたいする呼びかけの部分を検討することによって、1789年の革命、 1848年の二月革命、そして「女性」についての彼女の考え方をあきらかにする。マリー・ダグーは二月革命当初、臨時政府の中心人物であったラマルティー ヌを崇拝していたが、やがてカヴェニャック将軍支持にまわった。ルイ・ボナパルトに不信感を持ち、政治家たちの無能さに危機感を覚えた彼女は、1848年 12月の初代大統領選挙直前に、選挙権を持たぬフランスの女性たちに呼びかけ、彼女らの「女の力」によって社会状況を変えようと訴えた。この呼びかけはロ マン主義的な「女性メシア論」の流れをくむものであるといえよう。